• 今わの指の白い柔らかいこの指。互いの思いがこの細い指を通じて。

  • これほど繊細な農具がはたしてあるだろうか。小松菜の種のひとつぶずつを選り分けて。

  • いつ寝ていたのだろう母の指。そしてその指貫きもまた。母の遺した丸い指貫き。

  • あれほど固く誓った約束なのに。歳月はいつしか互いの指の温さも忘れられ。

  • 天上からするする降りて来る一本の蜘蛛の糸。われも我もといくつもの手が。

  • 節くれのこのごつごつの十指が今の暮らしを。

  • このささくれは大地を握り砕いてきたから。苦労の先を信じてきたこの指。

  • 父の遺したこの鍬を。握る指も節くれいつしか父に似て。

  • 母の指は饒舌。小指から親指まで母の生涯を語ってくれる。

  • 映画、高倉健のあの制服、制帽が今も脳裏に。

  • あれほどうまく剥けたのに。年齢というやっかいなものがこの指を固まらせ。

  • 現代社会においてこの地は首根っこということが。イランの強気の訳も。

  • 目は口ほどというなら指に語らせる生き様も。指は饒舌。

  • 親子というふたりの何と不思議さ。DNǍ はかくも正直。

  • 生まれた時から詩人の孫。双葉よりかんばし、とはいうものの。

  • この指で育ててくれた母の指。節の一つひとつに子育て日記。

  • 神に奉仕する人生はかくも気高きものか。白い指もまた神の作りしもの。

  • どんな円も曲線も。多機能といわれるスマホさえあやつるいっぽんの指。

  • 額にあてたいっぽんの指。指に集まるあなたの情報。

  • 日頃目立たぬこの足の指が私の全体重を支えている。

  • このもみじがやがて世界を掴むかも。はてしなき未来がそこに。

  • あの寡黙な無彩色から賑やかな彩色の春の空。横切ったのはひばりかつばめか。

  • 素足に感じる大地の温み。両の親指に力を入れて。

  • 指の傷は日にち薬で治るが心の傷はどうすれば。

  • 何本飲んだか針の数。約束を違えた訳は黙して語らず。

  • この美しい指でこの宝石のようなさくらんぼを赤いお口に。

  • 赤い糸がこんなに脆いものとは。誰の責任でもなく。

  • 全体重を支える足の指。多くは望まぬ足の指はいつでも靴の中。

  • とうに予定の時間は過ぎて。駒と盤が作った乾いた音も急く。

  • この指が覚えている君の温もり。時は過ぎても。