• 生まれ出て陽に向かう若葉はひたすらまっすぐに伸びる。汚れを知らぬ青年の主張もまた。

  • 「寝ていてもうちわの動く親心」は人情深き江戸の景。若葉風は泣きつかれた子らには時に親と同じ風を送る。

  • 土を耕しお天道さまに感謝して暮らすふる里。人と人とのつながりを大切にするふる里。みんな顔見知りのふる里。

  • たどたどしいことばを運んでくれる若葉風。差出人は幼稚園児。濁らぬ目でまっすぐ私をみてくれる浄化のひととき。

  • 少子高齢という乾ききったことば。それに引き換え代々続く柿若葉の下の三世代の温かさ。ふと懐かしむ昭和の場面でもある。

  • タラの芽を代表とした若葉からもらう英気はいくつもある。その度に人間もまた自然の一員との自覚。

  • 山また山の稜線はまるで母の丸みにも似て。風も陽も人を包んで人にやさしい。

  • いつになったら出仕が叶うのか。若葉がぐんぐん伸び、時に励ましてくれるのだが。

  • 若葉には自然のエネルギーを感じる。引きこもってなどいられない。自然と同化して老いなど忘れよう。

  • 難を転じ福を招くという南天。きっと金の成る木になってくれるだろう。その日を指折り待っている。

  • あれこれと尽きぬ立ち話。日時計の針となってしまった二人。あちらの木陰に移ってまた立ち話。

  • 「落葉帰根」は「大地の子」の台詞。盛りを過ぎた落葉は次の世代を土となって託す。

  • 鳥の鳴き声を「恋かたる」と表現できるのはまさしく詩人。小鳥や若葉に優しいまなざしを向けることができるのもまた詩人。

  • きらきらと若葉を透り抜ける日差し。若葉を通して陽も風も透明感を持つ。私は今、妖精になっている。

  • 整理整頓とは棄てること。身辺が見違えるほどきれいになった。あと残るはこの体一つ。

  • 生きる、ということは命を守ると同義語。外敵との闘いの連続でもある。若葉はそっと命を守り隠してくれる。

  • もう久しく誰も漕がぬ公園のブランコ。いつしか錆びてしまった。きしむ音は若葉の陽がやさしく押してくれるから。

  • もう何も欲しいものなどはない。全て手に入れた。あとはゆっくりこの大自然に抱かれ晴耕雨読の日々を夢見る。

  • そっと若葉が唆す。恋の季節ですよ。人間は恋をしている時が最も光ることを教えてくれたのも若葉。

  • 自然を再発見できるのは人間関係の煩わしさや仕事を忘れることができた時。仰ぎみる若葉が目に痛い。

  • 長年酷使したこの体。自然の中で五体の骨を緩めて深呼吸。「肺洗う」が秀逸。

  • 「若葉」ということばの響きには、これからという可能性がある。君と歩くこの道の向こうにも「希望」というこれからがある。

  • むせ返る若葉の匂い。君だけを見てわき目も振らずまっしぐらに進むのもまた若さゆえ。

  • 真ん中に父がいた。「ご飯ですよ」と呼ぶ母がいた。小さなちゃぶ台を囲んでの晩ご飯。若葉だけが昔のまま。

  • 目的に向かっての一歩は新しい靴にしたい。颯爽と若葉の風を切り裂いて。私にもそういう時代が確かにあった。

  • 雛を育ててくれたのは若葉たち。巣立ちの日を祝ってくれる若葉たち。

  • 働き手を外国に求めなければならない日本国。若葉もまたあらゆる人種を受け入れてくれる。

  • 無聊の日々。薫風が街へ誘おうと懐手は鼻を広げて春を確かめるのみ。

  • 亡き母の拵えたかしわ餅。手順はおぼろげだが母の味には近づいた。こうして母から子へつなぐ我が家の味。

  • 季節や作物の育ちは耕作者の都合など聞いてはくれぬ。時には疲れた体に鞭打って。その向こうには収穫の喜びがある。